アフリカの試練【パリ〜ダカール自転車旅 モロッコ編】
6/29 ファニク→テトゥアン 35km
モロッコ北東部のビーチはここ最近開発が進み、国内外から多くの観光客が押し寄せるようになったらしい。
なんでも国王が気にいって金を惜しみなくつぎ込んでいるとか。確かに波は穏やかで、水は澄んだ綺麗なビーチだ。
昼間に声をかけてきたパリ人3人組と昼飯を食べていたところ教えてくれた。真性のインターナショナル陽キャだった。6ヶ国語喋れるんだってよ…
6時過ぎからテトゥアンに向けて出発。といっても15kmも無いので余裕だが。途中おっさんにホテルを紹介されそこに泊まることにした。
財布には25€。一泊25€。ちょうどすっからかんになるねだんだった。
これで手持ちは0€。何となく嫌な予感がした。
その後頼んでもないのにおっさんが呼んできた、ガイドのアヴドゥルに連れられ金を下ろすためにATMに行った。
しかし
アメックスが使えない。
ライフカードが使えない。
JCBはもちろん使えない。
アヴドゥルはよくあることだと言って笑っているが、
ベトナムで無一文になったことを思い出し内心冷や汗が止まらない。
予感は的中した。ATM を10ほど回ったがどれも私が期待した働きを見せてはくれなかった。
そして今、十数枚の絨毯を怪しげな雰囲気の商店の中で見せられている。
アヴドゥルはここなら金が用意できると言っていたが、多分クレジットの金額を多めに入力し差額をくれるつもりなのだろう。
店主は流暢な英語を操る、4人の妻を持つ27歳の好青年だ。
出されたミントティーを飲みながら彼の話を聞く。お茶は美味しい。
今からベルベル族の交渉の方法を教えるので気に入った絨毯を選べ、と。
買うつもりは一切無く選んだ絨毯の値段を書いた紙を渡され、値引きの交渉を始める。
帰っていいかな。
アヴドゥルをチラリと見ると無言で親指を立てている。ふざけんな。
あまり乗り気でない私の態度に何か思うところがあったのか、店主はその理由を尋ねてきた。
すると彼は、
「無理に絨毯を買っても私達はハッピーだが、君はそうじゃない。お互いがハッピーになれないなら買うべきじゃない。
今日は来てくれてありがとう。お茶は美味しかったかい?
また、いつの日か会おう。」
4人の妻を持つ男はそこらの押し売りとは違うようだ。惚れそうになった。
アヴドゥルは次にレストランに連れて行こうとしたが、あいにく所持金がほぼ無いことを告げるとここでガイドは終わりだ5€払えと言う。
話聞いてなかったのかコイツ。
ほとんど役に立っていないのに金を払うのは癪だがまぁしょうがない。
財布の小銭をかき集め、やっと2€を渡し
「今日はもうこれで夕飯も食えないよ」と言うと、
アヴドゥルは渡した金で露店の揚げ物を買って寄越し一言。
「今、君はハッピーかい?」
無性に力が抜けた。
ホテルに帰って寝よう。
これから一旦スペインに戻って、旅するのに十分な資金をキャッシングしてこなければならない。詳しい事は明日考えよう。